大阪市都島区にある土井工務店代表の土井(@takeshidoi73)です。住宅と店舗に特化してリフォーム/リノベーション専門店を経営しております。
先日、堺市在住のお客さんから屋根の瓦が雨漏れして止まらないという相談を受けました。
堺市のお客様は、過去に屋根屋や工務店にも屋根の状態を見てもらったようですが、雨漏れの原因が分からなかったよう模様。
よく瓦が割れて補修をしてほしい、差し替えてほしいというのはありますが、雨漏れしている瓦は切妻の屋根や片流れのような屋根でない限り、雨漏れの発見は難しくなります。
散水調査などで雨漏れを探す方法もありますが、正直足場のかかっていない状態では危険ですし、どうなるのかもわかりません。
そのため、ベテランの職人が多い当社へご紹介の連絡があり、ご縁あってお家の屋根に二連梯子をかけて屋根の上に登って現地調査、及び屋根裏に入って雨漏れ箇所を見ることになりました。
その結果、実際の屋根の状況及び分かったことは次の通り
屋根の形状は変形寄棟(L字型)
漆喰が劣化している
瓦のひび割れは無し
屋根の勾配は4寸ほど
30年以上屋根の手入れはないと言っている
しかし、瓦に謎のコーキング補修
のし瓦の勾配が悪い
雨漏れがかなり酷い
現地調査した際に現場にて上記のことが判断できました。
ですが、僕一人では正直、今回判断に悩むところでしたが、たまたま近くで当社の屋根職人がリフォーム工事をしていたので現地調査に来てもらいました。
実際に雨漏れしている写真が次の通り。
屋根の棟や谷から雨漏れして棟木、野地板、垂木が濡れています。
お客さんが言うには台風のような強い雨があった場合に横風がふいて、そこから雨漏れをするようになったという報告もありました。
結果、僕含めて5人(大工、屋根屋3人、僕)で屋根を見る状態でしたが、これは屋根屋では触れない、瓦屋に連絡しようということになりました。
瓦屋の現状判断で雨漏れ箇所を特定し、屋根の瓦をどのようにリフォームして雨漏れを直すのか?と言う判断を御仰ぐことにしました。
その結果と対処法についてお話ししていきましょう。
瓦屋が見つけた雨漏れの原因
実際に瓦屋がめくって雨漏れを確認した部分で、瓦の下にある土の色が変わっているのがわかります。
実際に雨漏れしていたため周辺の土よりも濡れて湿った土の状態で、周辺の乾いた土に比べて濡れた土の感触がありました。
原因1 のし瓦の下の土が痩せて角度が悪い
写真ではわかりにくいかもしれませんが、当時の施工では真ん中の瓦を機械や工具でなく手動で叩き割っていた時代もあったので、棟ののし瓦の下の土の下には隙間があり、そこには年数により経年劣化したことによって、痩せた土があるため、のしの角度が悪くなり、内側にのしが入り込んでいきます。
その結果、雨水の流れる方向が真ん中の方へ進むことによって雨漏れが起きます。
原因2 水切り下の勾配が悪い
実際にこの下の瓦をどけた写真が最初の写真で、下部も雨漏れしていました。
板金の下ののし瓦の角度が内に入ることによって、雨水が家の中に向かって流れているようです。
原因3 漆喰の劣化
これは簡単にわかりますが、漆喰が落ちてしまっており、明らかに穴が空いています。
この場合は、この隙間から雨漏れを起こしやすいので、和瓦で一番分かりやすい経年劣化や破損の部分です。
原因4 谷板金の劣化
屋根裏を除いたところ谷板金の下がかなり木材が濡れていました。
やはり30年もすれば谷板金の周辺は特に雨漏れを起こしやすいと感じます。
寄棟の家ならではの特徴でもあります。
その他:招き部分の瓦が落ちかかっている
これは瓦屋さんに指摘されて気づいたのですが、右端の招き部分の瓦が落ちかかっています。
原因は下に化粧垂木が一本少ないと言うのもありますが、やはり真ん中の留めになっている三角の部分に隙間ができて釘が弱くなっていることから抜けてきたのかもしれません。
瓦が飛んでしまうと周囲に危険が及ぶので一刻も早く修繕する必要がある状態でした。
締め:雨漏れを直すための工事内容
下記は瓦屋の職人と話し合った結果のリフォーム内容です。
棟の交換(のし)から棟木を入れて、漆喰の補修、7寸丸瓦へ
水切り下には板金を差し込んで立ち上げてカバー。
招き部分は瓦をどけてから下地の補強
今回、本職のお寺の入母屋や複雑な瓦の屋根工事をしているような瓦職人と一緒に工事をしましたが、素直に感じたことは今回の屋根の形はL字の寄棟なので田舎の他業種の職人ではこれを治せなかったんだろうなと思いながらリフォーム工事をしていました。
僕たち現場の会社は正直な話、横の繋がりで職人が助けてくれるそんな関係性で工事を行うことができています。
しかし、このように専門性の求められる複雑な瓦では確かに街の営業会社や職人では雨漏れを特定できなかったのかな?と思いました。
僕が一緒に工事をしている屋根屋さんもいわゆる板金屋(ブリキ屋)と呼ばれる職種で、瓦屋とは別で屋根の仕事は専門性が高いので本当は分業されています。
当社の屋根やさんも普通に俺がしてはダメ、本職に頼みなさいと断られるほど真面目な方なので、僕自身も本職の職人の重要性が改めてこの堺市の屋根の現場で感じさせられました。
しかし、工事欲しさにできないにも関わらず仕事を請け負ってしまうような業者も多いのが建築業界の現場。
よく言われているのは、地震や台風の多い時期は屋根を触ったことのない職人が屋根屋をしているとまで言われています。
過去の事例では、阪神大震災の時には、ペンキ屋さんが稼げると言う理由で屋根のカラーベストの工事をしていたなんて話までありますから。
実際、この堺市の和瓦のお家ではNGとされているコーキング補修を謎にしていたので、びっくりしました。
普通はコーキングを闇雲につけると瓦から流れる水の流れを止めるので普通は推奨されていません。
もちろん、ラバー工法とかは別の話です。
また次回の記事では、実際にどのようにして瓦の屋根の雨漏れを直したのか施行事例の記事を更新しますのでお楽しみにしてください。
それでは、皆様が少しでも素敵な時間をお家で過ごせるよう願っております。
質問や相談等があれば、記事を読んでくれた方に費用等はいただいておりませんので、気軽にご連絡ください。
それでは時間を大切に良い一日を。
土井工務店 代表 土井健史